ビジネスにするということ

先日、とあるウェブサイト制作会社の説明会へ行ってきました。わたしがやりたいと思っていることとは少し方向性が違うと感じたので、選考への参加は辞退させて頂いたのだけど、とても考えさせられる良いお話しを聞くことが出来ました。
企業がお金を払ってでもウェブサイトを作るということは、インターネットを活用してビジネスを展開したいから、です。つまり、たくさんのユーザにサイトを見てもらって、商品やサービスを知ってもらったり、その場で購入してもらったりユーザ登録をしてもらったり、あるいは問い合わせをしてもらうことを期待している、ということ。企業が提供する商品やサービスには、その商品の主な顧客に成り得る想定された特定のユーザがいるのだから、そのためにはユニバーサルデザインよりもユーザビリティを重視したデザインが必要なのだ、というお話しを聞き、おおいに納得してしまいました。今まではWEB標準に準拠したサイトばかりに目がいっていたけれど、インターネットではそれぞれの企業の顧客に成り得る人々にピンポイントで宣伝をすることができるのだから、顧客になりそうにない人々にも配慮したウェブサイトを作るよりは、そういう人にとっては多少使いにくくても、顧客に成り得る人々にとって最適なウェブサイトであった方が、売り上げは伸びるはず。
多々あるウェブサイト制作会社の多くが、いまだにテーブルレイアウトをしていたり、ソースを見るとがっかりしてしまうようなサイトを作っているのには、こういう理由があったのだ、とようやく気付きました。正しいマークアップをして、W3CのMarkup Validation ServiceでCongratulationsと表記されても、企業にとってはSEO対策がされていて、ヴィジュアルが美しくて、売り上げが上がるなら、正しいマークアップかそうではないかなんて、どうでもいい(とまでは言わなくても、そんなに重要ではない)ことなんだろうな、と思います。
そういうことは、いつもいつもウェブに関する考え事を聞いてくれている方が何度も教えてくれていたはずなのだけど、いまさら深く納得してしまいました*1。好きなことを仕事にするのはやめておいた方が良い、と言われたことがあるけれど、その通りなのかもしれません。わたしはプログラミングも3DCGもネットワークの勉強も好きだけど、それよりももっと好きなウェブサイト制作に関することは(些細なことだということは分かっているけど)、好きだからこだわりたいところがあって、ゆずれないと思うところがあって、それはビジネスをするにはきっと適さない。ウェブに携わりたいと思っているのに、些細なこだわりを捨てられなくて、足がかりとしてでも携われるのならどの会社でも良い、と飛び込んでいく我武者羅な気持ちが、わたしにはずいぶんと足りない。ウェブサイト制作をビジネスにする、という考え方と吹っ切りが、大きく欠如していることに、気付いてしまいました(就活を終える前に気付いた方がよかったのか、終わってから気付いた方がよかったのか、わからないけれど)。
わたしの周りでは唯一、好きなことを仕事にしたいと少しでも考えていて、行動にも移している友人がひとりいたのだけど、彼女と一緒に、好きなことを仕事にするということについて、ぽつりぽつりと話しました。言葉では表しにくいけど、言いたいことが伝わって、「その感覚わかるよ」って言ってもらえることや、わたし自身が共感出来ることが、とても心地良い。なにか、違う。なにかが、そうじゃない。漠然とウェブサイトを作る人になりたいと願ってきたけれど、これからもウェブにずっと触れていきたいから、嫌いになりたくないし、妥協をしたくないし、杜撰に扱いたくはない。好きだと思えなくなるくらいなら、ビジネスだと割り切って納得のいかないウェブサイトを作るくらいなら、ビジネスにしなくて良い、そのために現場で活躍する人にもならなくて良い、でも、同じくらいウェブに関わりたい。泣きたいくらいに、我が侭だけど。

*1:このブログを読んではいないだろうけれど、Oさん、理解が遅くてごめんなさい!