No Enjoy, No Success (for me)

ここ数日で2冊の本を読みました。どちらも仕事に対する考え方の本。この本を読んで徒然と考えてみたことを、少し留め書きしておきます。
最初に読んだ1冊目は「プレイフル・シンキング」という本で、仕事への取り組み方をいかに楽しく捉えるか、という視点で書かれています。物事に対してわくわくどきどきしている状態がプレイフルな状態であり、物事に対してそういう気持ちを持つためにはどうすれば良いのか、そういう場をつくるためにはどうすれば良いのか、ということが書かれている本です。苦労しないと成長出来ないなんてことはない、毎日がHAPPYで良いじゃないか、HAPPYでいるための方法としてこういうのはどうだろう、と教えてくれる本 :-)

プレイフル・シンキング

プレイフル・シンキング

次に読んだのは「小さなチーム、大きな仕事」という本で、仕事で成功するためにはどのような考え方を持てば良いのか、という視点で書かれていました。刺激的なキーワードがいくつも散らばっていて、考えもしなかったような見方に気付かされる本です。
小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)

小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)

この2冊の本を読んで感じたのは、すごく対照的だということです。書いてあることも、言葉面だけみれば正反対のことが書かれてあったりします。例えば「失敗」についての捉え方。"プレイフル"では「失敗して当たり前、失敗とはある時点での現象であり、本当の失敗とはその時点で前に進むのを諦めてしまうこと」だとしています。"小さな"では「失敗から学ぶべきことに何があるのか、成功から学ぶべきことの方がずっと大きく、成功だけが本当に価値のある体験」だといっています。
この2つの意見は「失敗」に関してまったく正反対の意見を述べているように見えるけれど、でも実は、そうではないのかも、と思う気付きがありました。どういうことかというと、"プレイフル"には「失敗を恐れず一歩を踏み出そう」ということが書かれているのであり、"小さな"には「失敗を良しとして自分を甘やかすな」ということが書かれている、ということです。つまり、一歩を踏み出せない人が動き出すためのメッセージとしての前者であり、動き始めた人へのメッセージとしての後者である、ということ。メッセージを伝えたい相手の状態が違う、ということ。

この2冊は、仕事をしていく上での考え方というジャンルでは同ジャンルなのかもしれないけれど、仕事というものをまったく違う視点から見ています。"プレイフル"は「楽しく」ということを重視していて、"小さなチーム"では「成功する」ということを重視している。前者は「楽しめず動き出せない人」への本、後者は「楽しんで動き出している人」への本。読む順番が違っていなくて、本当によかった!(最初に"小さな"を読んでいれば、きっとどうしようもなくつらくなるだけだった気がします)。

2冊の本に書かれているメッセージや目的は決定的に違うけれど、でも、どちらもたどり着く先は同じだと思います(たどり着いたときの状態に違いはあるとしても)。きっと「楽しく働くこと」と「仕事で成功すること」は比例することはあっても、反比例することはないのではないかって思います。ただ、上記2冊においては見ている方向が逆なだけで、「楽しく働くことによって、より良い動きが出来、それが仕事への挑戦や成功に繋がる」であるか、「成功するために動くのにモチベーションは重要であり、モチベーションを保つためにも小さな勝利(成功)を手に入れ続けよう」であるか、ということ。

わたしは基本的に楽しいことが好きで、楽しくないことにはあまり時間を費やしたくないタイプです。数日前に読んだid:Chikirinさんの「イケテない私」というエントリでいうなら「イケてない」方。このエントリの中で、共感できる部分があったので、引用してみます。

ちきりんは自分も今は「明らかに下段の人だ」と確信しているけれど、「もしかしたら自分は上かも?」と思っていた時期はとてもつらかった。

だからイケテない人がイケてる人を真似したり、同じように生きようとするのは止めたほうがいい、と思ってる。そんなことしても人生つらいだけだ。

「努力を否定するのか?」と言われそうだが、努力って下にいる人に関して言えば、基本は報われないものだと思ってる。(たまたま報われることも、もちろんあるだろうけど。)だから、努力というよりそのプロセスが好きならやればいい。楽しいと思えるならやればいい。でも、つらいだけならやめた方がいい。人生は無限じゃない。つらいことより楽しいことに時間を使うべきだ。

一方でちきりんは、「イケてる人には是非頑張ってもらいたい」と思ってる。そういう人にとても期待しているし、応援しているし、尊敬している。才能のある人にはどきどきするし、センスのすばらしい人には感動する。もしもちきりんで役立つことがあるなら、なんでもお手伝いさせていただきたいです、とも思ってる。

わたしも今は「明らかに自分はイケてないし、それで良い」と素直に思います。だけど、そうではなく、「イケてる人になりたい」と思っていたときはすごくつらくて、大変でした。でも、わたしが大切にしたいのは「楽しい」状態であることであり、そうではないことは"小さな"でいう「やめたほうがいいもの」だと、今はそう思います(それは、勉強をしないとか、したくないことは一切しないとか、そういうことではなくて。いかに成功するかよりも、いかに楽しむかという視点で物事に取り組む、そんな視点を持ち、それを認めるということ)。
人によって"小さな"でいう「芯」は違うと思うし、それで良いんだって思います。モチベーションをあげるためのより重要な要素が「楽しい状態であること」なのか「成功すること」なのか、あるいは全然違う別のことなのか、人によって違いがあるだけ。わたしにとっての「芯」は「成功する」ことよりも「楽しむ」ことにあって、"小さな"が教えてくれるように「その部分を最大限に引き出すべく、エネルギーをすべて注力」しようと、そう思えました。それは「成功したいという気持ちがない」「失敗しても楽しければ良い」という訳では決してなくて、ただ、わたしが動き始めるための切欠。拠り所が欲しくなったときに見返す原点。

2冊の本に出会えてよかったと思います。どちらか片方が欠けていればこんなメッセージは受け取れなかったし、ここまで考えることも、きっと出来なかったはず。「動き始めるのが少しこわい」方へは"プレイフル"を、「希望を持って動き始めている」方へはその世界の地図として"小さな"を、どちらもおススメの本達です :-)